環オホーツク観測研究センターについて

  「環オホーツク地域」とは直接的にはオホーツク海とその周辺地域を指しています。しかしその意味するところは、東西には北太平洋とユーラシア大陸を包含 し、南北には熱帯・亜熱帯や北極圏からの影響を受けている、広大な領域であると私たちは捉えています。厳寒なシベリアからの寒気により、オホーツク海は北 半球において最も低緯度で結氷するという大きな特徴があります。海氷は地球環境に様々なインパクトを与えていますが、中でも私たちは結氷時に生成される高 塩水の中層(300-500m)への沈み込みと、それを原動力とした物質の長距離輸送に注目してきました。特に、アムール川を起源とする「鉄分」がオホー ツク海中層循環に乗って千島列島へと到達し、潮汐混合等を介して海表面に戻ることで最終的に親潮域や北太平洋亜寒帯循環の広域にわたって植物プランクトン の光合成に利用され生物生産を支えているという、絶妙な仕組みが明らかになりつつあります。また、海氷自体が鉄分を効率的に運ぶことも分かってきました。 このように巧妙なシステムを持つ環オホーツク地域ですが、河川流域における土地利用の変遷や昨今の温暖化による海氷の減少の影響が懸念されています。

  環オホーツク観測研究センターは、このように豊かな環オホーツク地域の環境の研究を進めるため、平成16年に北海道大学低温科学研究所の付属施設として 設立された国際研究拠点です。設立から10年を経て平成25年に改組を行い、新しい分野横断的研究テーマを対象とした2つの研究分野「気候変動影響評価分 野」、「流域圏システム分野」を設け研究活動の更なる発展を目指しています。また、国内はもとより、ロシア、中国、アメリカ、カナダなどの大学・研究機関 との共同研究ネットワークをさらに強化するため「国際連携研究推進室」を設置しました。国際的な研究者コミュニティーの発展と研究基盤・観測ロジスティク スの整備により、長期的視野に立った、より独創的な共同研究プロジェクトの創出を目指しています。

センター長 三寺 史夫